この日、あたしは翔さんの家に押しかけた。


玄関先で睨みつけながら好きと言ったら、「なんで玄関先で?」と言われたから「言いたくなったんです」と言ってやった。睨まれて苦笑する翔さんが「……とりあえず上がって」と家に上げてもらい、あたしの作戦は成功した。


今日、あたしが押しかけたのは、他でもない。


「翔さん、彼女と会ってないんですか」

「会ってないね。連絡は取ってるけど」

「まだ好きだって言わないんですか」

「言えるわけないじゃん。壊したくないんだ、あいつとの今の関係」

「でも好きなんでしょ?」

「好きだよ。……ていうか、りー」

「はい」

「なんでそんなに睨んでんの? 今日、怖いよ」

「気にしないでください。もともとこういう顔です」

「嘘だー。やっぱり、恨んでる?」

「翔さんは恨まれるようなことはしてません」

「したよ。りーに期待させるようなことした」

「期待するのはあたしの勝手です」


「もう、怖いって」と翔さんはお茶を啜った。