翔さんにこんなことをさせる自分は本当に最低だ。


翔さんにあたしを抱かせた上に、今こんなキスまでさせている。


その時、背中に衝撃が走った。


「……え」


目を開けると、翔さんがあたしの上に馬乗りになっていた。


あたしは、床に押し倒されていた。


……そして、こんな表情をさせているのも、あたしなんだ。


翔さんはあたしを見下ろしたまま動かなかった。


唇を噛み締めて苦しそうに端正な顔を歪めている。


見ているこっちまで苦しくなる。


この顔をさせたのはあたしだ。


いつの間にかあたしも唇を噛み締めていた。


それに気付いた時は既に血の味がした。


でも…………


あたしは、翔さんにそんな顔をさせたいわけじゃない。


翔さんの口がわずかに動く。


「こんなはずじゃなかった……」


絞り出すような低い声に、翔さんが泣いている気がした。


こんなはずじゃ、なかった。