エンドレス・ツール

「誠ちゃん……?」


思わずつぶやいてしまった。ぽかんと口が開いてしまうのが自分でわかる。


だって、そこに立っていたのは、いつもテレビで見ていた誠ちゃんにそっくりだったのだ。


あたしより頭ひとつ分は高いであろう長身。スッと伸びた手足。面長で、優しそうな顔立ち。


「え? 俺は翔。一緒の席だったんだけど、覚えてなかった?」


翔と名乗る人は、あたしが呟いた言葉を「誰?」と解釈したらしい。


誠ちゃんじゃない……。


くしゃっと笑ったその人は、よくよく見たら顔は誠ちゃんには似ていなかった。


声も全くの別人。


当たり前か。


こんな田舎に、アイドルの誠ちゃんがいるはずがない。


期待したあたしがバカみたいだ。


「席、戻んないの?」

「あ、戻ります……」


翔という人があたしの前を歩く。


あ、でも誠ちゃんだ……。


後姿が、誠ちゃんそっくりだった。


顔は似てないけど、全身を纏うオーラが誠ちゃんなんだ。


一瞬であたしを虜にした、優しくて温かいの。