「恋と憧れってのは、似てるようで違うからな。憧れってのは、敬愛なんだ。つまり敬って愛する。単純にワクワクしたり癒されるってのもあるかもな。一方で恋はその逆とも言える。自分のものにしたい、そばにいたい。所有欲が働くんだよな。基本自分の利益しか考えない。自分より相手の幸せを考えるようになったらそれは愛になって、そこはまた話が違ってくるんだよな。恋ってのは厄介だ。どうも憧れと恋を混同するやつが多くてな……」


あたしは兄貴の話を聞き流した。


どうせ彼女に振られたかなんだかで、その経験から学んだ教訓を喋りたいのだろう。


恋と憧れは混同しやすいってのはよく聞くからわかるけど、兄貴の持論ってのはわからない。


つまり、誠ちゃんはあたしにとって恋か憧れか考えろっての?


その時、ちょうどいいタイミングで誠ちゃんが映し出された。


「誠ちゃ~ん!!」


誠ちゃんが海でマグロの一本釣りを取材したらしく、テレビの誠ちゃんはスタジオのスーツではなく、ジーンズにパーカーだった。


「誠ちゃん、可愛い~」


あたしがニヤニヤしていると、後ろから「りり、俺の話聞いてないよな……」という兄貴の声が聞こえた。