「別にそんなんじゃないし」

「照れない照れない。ダブルデートできる日も近いで」


おいおい、どんな妄想だよ。


「あ、まずい。そろそろ帰んなきゃ」


時計を見ると十時前。


今日は母が帰ってくると予告していた日。めったにあたしたちがいるときに帰ってこないもんだから、無断外泊なんかしたら家から追い出されてしまう。


「え、璃里香、泊まっていかんの?」

「明日金曜日なんだけど……」

「りー、帰るの? じゃあ、お前らも帰れ」

「えー、なんで?」


ケイゴくんが翔さんに口を尖らせる。


「お前らまた始めるだろ。続きはお前の家かホテルでやれ」


翔さんがケイゴくんに向けてしっしと手を払っている。


「じゃあ、璃里香ちゃんがいたら黙認してた?」

「りーと一緒に追い出すつもりだった」


まあ、そういう話してたしね……。


「残念。翔さん家で始めるといつもより燃えるのに」

「安全な場所でやっても、スリルがねえもんな」

「お前ら、俺の家を何だと思ってんだ……」


翔さんは怒りを通り越して呆れているらしい。