というわけで。




「朝霧っ!」




あたしは朝霧がよくサボっていると噂の屋上までやって来た。


そこには噂通り、ほんとに朝霧がサボっていた。





「…榎波?」






朝霧が驚いたように、寝転んでいた体勢を起こす。





「……こっち来いよ」





そして少し掠れた声で、そうあたしを隣に呼んだ。





指示された通りペタンと朝霧の隣に腰をおろすと





「…俺に会いに来たのか?」





そう言ってあたしの顔を覗き込む。




朝霧の口元は微かに緩んでいて、…なんだか嬉しそう。






「……もっとこっち来いよ」


「…っえ」



あたしの腰に腕をまわして、自らに引き寄せる朝霧。




わ、わわわ…




男子にこんな事されたの…はじめて…





まるで、恋人同士みたいな…






ん?恋人同士?






そうだっ!!





「朝霧!!」





あたしは今日ここに来た目的を思いだし、朝霧を思い切り突き放した。






「……何だよ」






不機嫌そうにあたしを睨む朝霧。






「朝霧!あの!

あたし達って恋人同士なの!?」


「……は?」


「だって恋人同士っていうのは、こう、お互いに好きな人同士がなるものでしょ?

あたし別に朝霧のこと好きじゃないもん!!」



「……テメェ」





ただでさえ不穏だった朝霧のオーラが、今度こそ本当にどす黒く染まった。





ひぃ!?なんか怖い!?
でも本当の事だし!





「そっそれに!
朝霧もあたしのこと好きじゃないって言ってたじゃん!!」


「…………それは」


「だからさっ、つまりあたし達って一体どういう…っん!」






どういう関係なの!?と後に続く筈だったあたしの言葉は、唇ごと朝霧に飲み込まれた。





あ…あたし…





朝霧とキス…してる!?