「おい」




朝、自分の席で佳乃と志村と話していると、不機嫌オーラ全開の朝霧がやって来た。





「お前何で今日先行ったんだよ」


「……」




今日は、いつもより一時間も早く家を出た。



…なんとなく朝霧と会いたくなかったから。





「おい黙ってないで何か話せよ」


「………別に…」


「っちょっと来い!」




言葉を濁すあたしに苛ついたのか、朝霧がグイッとあたしの腕を強引に引っ張って立たせた。

そしてそのまま教室を出て行こうとする。




「ちょっどこ行く気!?」


「いいから来いよ」





つれてこられたのは、いつものように屋上。




「で」


「……」


「何で今日の朝、何も言わないで先行った」


「…別に、一緒に登校するとか約束してないし……」


「あぁ゙!?」





ビクッ






朝霧の苛々した声に、思わず体が震えた。




そんなあたしを見て、朝霧は一つため息を落とすと





「お前、なんか変だぞ。なんか…舞と会ってから」




ズキッ





“舞”と呼び捨てにする朝霧に、なぜかまた心臓が痛んだ。





「……もしかして」





何も言わないあたしの顔を覗き込んで、





「…舞にヤキモチ妬いてる、とか?」





朝霧の手があたしの頬にそっと触れた瞬間、触れたそこが信じられないくらいに熱を持って





「…っ触らないで!」





思わず朝霧を突き飛ばしていた。





「………」





朝霧が驚いたように目を大きく見開いて固まっている。





「…あ……違くて、今のは……!」


「…分かってるよ」




朝霧がは、と自嘲気味に笑った。





「そーだよな、お前が俺にヤキモチなんて妬くわけねぇよな。悪かったな、ちょっと喜んだりとかして」


「……あさぎ、り」


「……お前は別に俺のこと好きなわけじゃねぇしな」


「……!」




朝霧が笑った。



とても寂しそうで、見てるこっちが切なくなるような顔で。





「…朝霧っ」


「…もうお前にはあんまり付きまとわないようにするから。…悪かったな、今まで」




そして朝霧は最後にあたしの頭をクシャッと一撫ですると






…ガシャン