次の日。



「榎波さん」




振り向くと、美女さんがいた。




「…あー…朝霧だったら今、いませんけど」


「竜平じゃなくて、榎波さんに話があるの」




え、あたし!?




「ちょっと来て?」





そう言って、スタスタ歩いていく美女さん。





な、何だろう話って…





不思議に思いながらも、あたしは大人しく美女さんの後をついていった。






「…榎波さんって、」





連れて来られたのは空き教室。




ガラリと後ろ手にドアを閉めて、美女さんが口を開く。





「竜平のなんなの?」


「え」


「彼女なの?」





彼女!?





その言葉にボッと顔が熱くなるのが分かった。




「え、かかかかの!?」



「…好きなの?竜平のこと」






さっきよりも低いトーンでそう聞いてくる美女さん。





す、好き…?
あたしが朝霧を……?






「…………」






朝霧はただのクラスメイトで、つい数ヶ月前まで特に何の関わりもなかった。朝霧はあんまり教室にいないし。





でも、朝霧から告白(?)されて、初めは何で?ってそればっかりで、でも今は





「…………」


「…即答、できないんだ」




蔑むような口調でそう言う美女さん。






「だったらもう竜平に近寄らないで」


「え…」


「中途半端な気持ちで竜平の気持ち弄ぶなって言ってんのっ!!」




ガンッ…




美女さんが蹴飛ばしたゴミ箱があたしの足元に転がった。





「…竜平の気持ち、あんたが一番よく分かってんでしょ?」





朝霧の…気持ち…






「あたしの方が絶対に竜平を幸せに出来る」





そして美女さんは最後に睨むようにあたしを一瞥すると、空き教室から出て行った。