下野の声が、すこし怒っていた。


「琴葉のお父さんのこと聞いたんでしょ?」


「あぁ」


「琴葉が、どれだけ暴力を怖れてるか分からないの?」


その言葉は、俺を動かすには十分だった。


その瞬間、俺は体育館を飛び出した。


そうだ。


琴にとって暴力は、なによりも怖いもので。


今はお父さんと仲良くても、その傷は絶対に消えない。


「琴……!」


俺は無我夢中で、学校中を探し回った。