「あの日、私は決めてたの」 静かに話し出す沙織さんは、どこか寂しそうで。 「もう隆太とは離れようって」 それでも、まっすぐに俺を見て話す沙織さんが、どこか遠野に似てて。 「俺は……沙織さんにとって必要でしたか?」 柄にもなく、そんなことを言ってた。 「うん。あのときの私には、本当に隆太が必要だった」 俺の目をまっすぐ見る沙織さん。 「それが聞けて……よかったです」 心の中のもやもやが、スッと消えた気がした。 その一言が聞けなかったら、きっといつまでも沙織さんを想ってしまうから。