「なに?」
勇気を出して話しかけたあたしに、隆太くんはこちらを向かずにそう言う。
横顔からも分かる無表情な顔、冷たい声。
隆太くんが前よりもっと遠く感じる。
夏休みの補習でちょっとは距離が縮まったかなーって思ってた。
少なくとも、あたしはそう思ってた。
「これ……」
これを渡すのは正直辛いけど、あたしは泣かない。
好きな人の幸せを願うのは、当たり前だもん。
「……俺、捨てたでしょ」
表情は相変わらず変わらないけど、声のトーンが少し低くなった気がした。
あたしが渡したのは、あのとき隆太くんが破り捨ててバラバラになった紙。


