「隆太くん、これ」 あたしの声に一旦立ち止まって振り向く隆太くんに紙切れを渡す。 「なんだよこれ」 「さっきの女の人が、話したいって」 そう言うと、隆太くんは黙ってしまった。 そして、次の瞬間隆太くんから発せられた言葉はあまりにも冷たかった。 「……こんなもん、いらねーよ」 あたしの目の前で、紙切れを破り捨てたんだ。 「なんで……」 隆太くんの行動に、あたしは体が動かなかった。 「ごめん」 そう言って、隆太くんはそのまま人混みの中に消えた。