公園の丘の裏側から、そこへの階段が続いていることはもう知っていた。

いつも入ってくる入口よりも随分と狭い、民家の門みたいな裏口を出ると、そこからすぐにずーっと長い階段が上の方まで伸びている。

なんのためのものなのか。坂道に段々と建つ住宅の隙間を縫って、ところどころうねうねと曲がりながら、どこでもない場所へと続く階段。


「そう言えば、学校行かないの?」


トントンと、わたしたちはゆっくりとそこをのぼっていた。


「ハナこそ」

「俺はいいんだよ。でもセイちゃん制服だし、今日学校あるんじゃないの」

「あるけど、今日はもう行かない」

「サボりはよくないな」

「ハナに言われたくないよ」


わたしが言うと、ハナはぷすすと笑った。

街はもう活動を始めて、いろんな音が聞こえてくる。でも、ここには、わたしとハナのふたりしかいない。


「ねえセイちゃん、グリコって知ってる?」


真ん中へんまで来たところで、ハナが唐突にそう言った。


「知ってるけど? お菓子じゃなくて、ゲームの方だよね」

「うん、じゃんけんするやつ。あれやろうよ」

「別に、いいけど……」


一瞬恥ずかしさも掠めたけれど、どうせ人なんていないからまあいっかと開き直った。

ハナがぴたっと足を止めたのと同じ段で、わたしも立ち止まる。