夢と現実を行き来するような曖昧な毎日が終わったのは、先生が言っていた通り、手術から二週間が経とうとしていた頃だった。

心臓の拒絶反応もなく、経過は順調。

移植専用の個室から今までいた一般病棟の個室に戻った私は、急性の拒絶反応や感染症に気をつけつつ、リハビリを始める事になった。

私はそのことを、お見舞いに来てくれたリクに誰よりも早く報告する。


「へぇ~、もうリハビリできんだ」


パイプ椅子に馬乗りしながら、リクは目を丸くした。


「うん、明日からだって」

「順調だな」


微笑んだリクに私は頷く。


「たくさんの人のおかげ」


そう。今の私があるのは、たくさんの人に支えられ、助けてもらったからだ。

リクはもちろん、両親、ドナーとそのご家族、大塚先生や看護士さん。

よっちんやクラスメイトからの励ましも力になったし、色々あったけど奏ちゃんという大切な幼なじみも私にとって心の支えになっていた。


「そういえばね、奏ちゃんがお見舞いに来てくれたんだよ」

「奏チャンが? いつ?」

「いつだったかはわからないけど、移植専用の個室に移ってからだったと思う」


朦朧としていたから状況はあまり覚えてないけど、奏ちゃんと会話したのは覚えている。

もう大丈夫だという奏ちゃんの言葉が、やけに優しく胸に響いたのも。