桜涙 ~キミとの約束~



やっぱり、リクはどこか変だ。

もしかして、奏ちゃんと連絡が取れないことに関係してる?

そう考えた時。


「ところでさ」


リクの声が、私の思考を遮った。


「頼みがあるんだけど」

「頼み?」


聞き返せば、リクはひとつ頷いて。


「小春の心臓に手をあてたいんだ」


予想もしていなかった頼みごとに、私の目が丸くなる。


「えっ?」

「今日まで小春を支えてくれただろ? だから知っておきたいっていうか……」

「……わかった」


本当は少し抵抗があった。

だって、場所が場所だし。

心臓の鼓動を誰かに聴かせるなんて、そんな経験もない。


だけど……


リクには、知っていて欲しいと思えるから。


もうすぐ私から離れていく、命の証を。