桜涙 ~キミとの約束~



「今日はあの可愛い子いないんだなー。女に助けられた本庄くーん」

「ちょっと俺らと話しよーや。この前は中途半端だったしよー」


ドレッドの隣でガムを噛んでる坊主頭君がケンカを売ってきた。

そのパターンが前回と同じすぎて少し笑える。

ただ、前回と同じだと、その時にあった出来事も自然と思い出された。


小春が、駆けつけてくれた時、本当はたまらなく嬉しかった。

危ないからやめろと思う反面、オレの事を心配してくれる小春の気持ちが嬉しかったんだ。


でも──


「……オレ、もっと小春に嫌われるように突き放してれば良かった」


そうしたら小春は、こいつらとのケンカにも駆けつけなかったかもしれないのに。

無理をさせなかったら倒れることもなく、病気だってここまで悪くならなかったかもしれないのに。


「ホントオレ、中途半端でバカだよなぁ」


バカすぎて、笑いがこみ上げる。

オレはその笑みを浮かべたまま、奏チャンの肩に手を置いて。


「奏チャン、ちょっとオレ、こいつらとお話してくるよ」

「陸斗!」


止める声を背に、三人と一緒に路地裏へと向かった。