たくさんの医療機器がベッドを囲んでいる。

継続的に響く電信音は、オレの大切な子の様子を教えてくれるもの。


「小春、また明日」


静かに別れを口にすると、酸素マスクをつけた小春が小さく頷く。

その瞳は、柔らかく細められてオレを見ているけど……


そこに、力強い生命力はあまり感じられない。


鼻の奥がツンとして。

けれどそれを隠すようにオレは小春に微笑み返し軽く手を振ると、後ろ髪をひかれる思いを持ちつつ、いつもより早い時間に病院を出た。


早い時間と言っても、まだ空は紺色に染まり始めたばかり。

外の冷たい空気を肺に入れると、体温が少し下がったような気がした。


病院の前にあるバス停には、ちょうどいつも乗るバスが到着したところだったらしく、扉が開くとお客さんが次々と車内へと乗り込んでいく。

オレも最後尾に並んでバスに乗り込むと、空いていた一人用の席に腰を下ろした。