二人が病室を出たのは、まだ日が傾く前だった。
長居しては悪いからと、少しの談笑ののちに帰ってしまったのだ。
帰り際、よっちんがリクに「お邪魔しました」と口にした表情が意味ありげだったのを思い出す。
よっちんにはリクと付き合うことになった事と、その経緯を電話で報告してある。
だからきっと、そういう意味で言ったんだろうなぁ……
声をかけられたリクは「お邪魔されました」なんて返してたけど、なんだかちょっとこそばゆい感じ。
いつか、リクと恋人でいることに慣れて、誰に何を言われても普通に受け止められる日がやってくるんだろうか?
そんな風に考えた時、移植の話をしなければという思いが過ぎった。
リクは今、飛び出す絵本を楽しんでいる最中だ。
タイミングが今でいいのかはわからない。
けれど私は、大切なことだからこそリクには早く伝えるべきだと思い……
「リク、病気のことなんだけど」
声を、発した。
病気というワードにリクの穏やかだった表情が少し固くなる。



