顔を上げて、前を見て。


もうすぐリクが来てくれる。

そう考えただけで、心がフワリと軽くなって。

自然と口角が持ち上がる。


『毎日だなんて大変だから、無理しないでね』


この前、お見舞いに来てくれたリクにそんな風に言ったけど、やっぱり毎日リクに会えるのは素直に嬉しい。

大好きな甘いお菓子を心待ちにするような心境で廊下を歩き、自分の病室まで戻っていた、その途中。


いつもはきちんと閉まっている、梢ちゃんの病室の扉が開いているのに気付いた。

そこから、漏れ聞こえる女の人の声。


もしかしたら梢ちゃんの声じゃ?

だとしたら元気になってきているのかも!


梢ちゃんの元気な姿を期待して、私は扉に近づいた。


──でも。


「……っ……うぅ……」


聞こえてきたのは、梢ちゃんの声じゃなくて。


「梢ぇ……」


嗚咽の入り混じった、悲鳴を堪えるような泣き声。