文末に、自分の名前を書いて、ペンを置く。


「……梢ちゃんが早く元気になりますように」


祈り、便箋をたたんで封筒の中に入れると、セットになっているシールで封をした。

これをまた梢ちゃんに届けもらえるよう、あとで看護士さんにお願いしよう。

もう何通目になるかわからない手紙をベッドテーブルにそっと載せると、透明なガラス窓の向こうに見える夕焼けに染まった景色を眺めた。


一時帰宅から病院に戻って二週間。

今日は風が強いらしく、病室から見える常緑樹たちが忙しそうに揺れている。

何だか雨も降りそうな雲行きに、バイトが終わってからお見舞いに来ると言っていたリクの事が心配になった。


せめて、降り出す前に到着できるだろうか。


携帯を手に取り、時間を確認する。

16時35分。

リクのバイトが終わるまではあと25分。

もう少しで会える──と思った矢先、ある事を思い出した。