ふと、室内にノックの音が響く。
私が返事すると音を立てて扉が開いて。
「お待ちどうさま」
綺麗に盛り付けたおせち料理や飲み物をお盆に乗せたお母さんが入ってきた。
「はい、どうぞ。お雑煮もあるから、食べたかったら声かけてね」
私が「はーい」と頷けば、箸を手にしたリクが「いただきます!」と声をあげる。
通常なら、ここでお母さんが退室するわけだけど……
どうしたのか、ニコニコと笑っているだけで出ていかない。
「え、どうしたの?」
私は、まだ何かあるのかとお母さんに声をかけた。
すると、お母さんはニッコリとした表情を崩さずに口を開く。
「うん。最近、二人の雰囲気がなんか違うと思って」
来た、と思った。
毎日お見舞いに来てくれるリクの事を怪しんでいたのは知っていた。
だから、いつかそんな話をされる予感はしていたのだ。
「そ、そうっ?」
けど、まだ気恥ずかしくて、リクと恋人になった事を報告していない私は、とりあえずこの場を適当にやり過ごそうとした……のだけど。



