桜涙 ~キミとの約束~



「小春、大丈夫かい?」


奏ちゃんが、お見舞いに来てくれた。


「あ、れ? さっきメール……」


さっき、奏ちゃんからメールの返信が来た時の事を思い出す。

あれからそんなに時間は経ってない。

でも、さっきのメールには今病院に向かってるとか、そんな言葉は綴られてなかった。


奏ちゃんはメガネの奥で目を細める。


「ああ、ここに来る途中、バスの中で読んだよ」

「それなら今ちょうど向かってるとか教えてくれても良かったのに」


私が知ってる奏ちゃんはそうするタイプだし、その方が流れも自然だと思って言えば、奏ちゃんはリクに視線をやった。


「いつもならね。でも、陸斗がサプライズだって言うから」

「そそ。奏チャン、例のブツは?」

「ちゃんと持ってきたよ」


そう言って、奏ちゃんは両手に持っていた荷物を持ち上げた。

何の話をしているのかわからない私は、ただ二人のやり取りを見守っていたのだけど。


奏ちゃんの持っている荷物の1つに、見覚えがあって。