桜涙 ~キミとの約束~



前向きに。

いい事を考えて。


心に思うのは簡単だけど、それを維持し続けるのはとても難しい。

だから、自然と元気をくれるリクの存在に感謝すると共に、元気をもらうという言葉で、私の脳裏に梢ちゃんの事が浮かんだ。


「あの、梢ちゃんは退院しましたか?」


聞いた途端、瀬戸さんは眉を寄せる。


「梢ちゃん、今は状態が良くなくてご家族しか会えない状態なの。でも、元気になったら小春ちゃんにも声かけるわね」


元気づけるように言われて、私は頷くしかなくて。

体温計が計測終了の音を鳴らすと、私は瀬戸さんに手渡した。


「はい、ありがとうございます。それじゃあ、何かあったら呼んでね」


微笑みを残して、瀬戸さんが病室から出て行く。


「……梢ちゃん、大丈夫かな……」


文化祭に来てくれたくらいだったから、良くなってるとばかり想像していたけど……

まさか、悪くなっていたなんて。

肩を落とした私に、リクが優しく微笑みかけてくれる。