──小さな肩から下げた鞄には、たくさんの宝物が入っていた。


もうすぐ年少さんから年中さんになる。

ひとつお姉ちゃんになれるのだと張り切っていた私が部屋から持ち出した鞄の中の宝物は、お姉ちゃんな自分を意識したおもちゃのアクセサリーたちだ。


「今日は桜が綺麗な公園に行こうか」


お母さんが言って、"綺麗"や"可愛い"といったものに興味深々だった私は首を縦に振ってお母さんと手を繋ぎ、桜を見に行った。


少し、早い時間だったと思う。

公園には人があまりいなくて、だけど、目の前に立つ桜の木はとても立派で綺麗で。

ベンチで休憩しているお母さんに見守られる中、私は桜の木に近づいた。


そこで……私は、出逢った。


優しい日差しの下、桜の木を背にひざを抱えて泣いている少年に。