「……まあ、後でいいや。風邪ひく前に上がって」
やっぱりその話題に触れるのだと知り、心が悲しみの重りを背負ったようにズッシリと重くなった。
少しだけど、頭や肩に乗ってしまった雪を玄関先で払い、リクに続いて家の中に入る。
「お邪魔します」
挨拶したけど、おじさんの声は返ってこない。
「あ、親父はまだ帰ってないよ」
先に階段を登るリクが振り返らずに教えてくれる。
私は「そうなんだ」と答えて、リクのあとを追って階段に足をかけた。
ギッギッと木製の階段がたわむ音を聞きながら二階へと上がり、そのままリクの部屋に入る。
そこはすでに暖房がきいていて、寒さでかじかんでいた手足がジンとほぐされていくのを感じた。
「適当に座ってて。なんか温かい飲み物でも用意してくる」
「ありがと」
リクはクローゼットの扉にかかっていたハンガーを私に手渡して、部屋を出て行った。



