桜涙 ~キミとの約束~



まだ、心臓は落ち着かない。

ドクドクと少し早いテンポで鼓動を打っている。

私は左手で胸をそっと押さえた。

そして、再び大丈夫だと頭の中で繰り返し……

右手の人差し指でチャイムを押す。

呼び出し音が聞こえて数秒後、玄関の扉が音をたてて開いて。

中から、リクがひょっこりと顔を覗かせた。

会いたかった人を前に、さっきまで色々と感じていたマイナスな感情がいくらか吹き飛ぶ。


「お待たせ、リク。いきなりだったのにありがとう」


言って微笑んだのだけど、リクはジッと私を観察していた。

そして、唇を動かしたかと思えば。


「……急いだだろ」


会って第一声が咎めるようなソレ。

病気の事を気にかけてくれての発言だと思った私は、心配させまいとかぶりを振った。