桜涙 ~キミとの約束~



「……私が行くよ。お邪魔していい?」

『うち? いいけど……お前、どこにいんの?』

「駅前。すぐに行くから、少し待っててね」


本当は、百瀬さんの事を考えると気持ちが沈む。

だけど、リクに会えるのは嬉しくて。


携帯を鞄におさめると、私は人波をかき分け歩き出した。

馴染みのある店の前を通過し、やがて住宅街に入る頃には、自然と足早になってしまっていた。

急ぐつもりはなかったけど、気付けば少し息苦しさを感じる。

病気の事があるのだから気をつけなければと思うのに……


リクに会いたいという気持ちが、私の背中を押していた。


大丈夫。

リクに会えたら、きっと回復する。


病は気から。


大丈夫。


大丈夫。


心臓に言い聞かせるように頭の中で唱え続け……

十分後、私はリクの家の前に到着した。