桜涙 ~キミとの約束~



「ごめんなさい。せっかく二人で過ごすイヴだもんね。私の話はまた時間取れそうな時で大丈夫」


これで、あとは別れの挨拶を言って通話を切るだけ。

リクも「またな」と返してくれて、私は一人、家に帰るのだ。

そう、思ったのだけど。


『過ご……?』


リクが電話の向こうで眉を潜めたような声を発した。

そして──


『あっ、そっちか! 待て小春。えっと、とりあえずオレ、今家にいるから。一人で』


語尾の辺りを強調して言った。


『聞こえてる? オレは一人です。で、どこに行けばいい?』

「え?」

『話し、あるんだろ? むしろオレもちゃんと説明しないとなんないっぽいし』


なんの説明?

まさか、正式に百瀬さんとの事を報告されてしまう、とか?

そ、それはちょっとキツイかもしれない。

まだ、笑顔でおめでとうと言えるかわからないのに。