桜涙 ~キミとの約束~



「あ……」


記憶は途絶え、映像が消え去った。

同時に吐き気を覚えて、私は無意識に手を胸にあてる。


「小春?」


立ち止まっている私に気付いた奏ちゃんが、駆け寄ってきて顔を覗き込んだ。


「大丈夫かい?」

「う、うん……ちょっと、変な感じになっちゃって」

「変な感じ?」

「……昔の、記憶が蘇ったっていうか……なんか頭に浮かんだの」


いつもは夢でしか見なかった。

こんな風に思い出したのは、初めての事だ。


「あの子……私の方を振り返ろうとしてた」

「……約束した子?」


私は頷いて、言葉を続ける。


「でも、顔までは思い出せなかった」

「……小春は、思い出したいの?」


奏ちゃんの質問に、再び頷いてみせた。


「約束したのは、私だから」