奏ちゃんが、唇を噛み締めて俯く。

こみ上げる何かを堪えるように、肩を震わせて。


「僕、は……」


涙混じりの声が聞こえると、奏ちゃんの手が私へと伸ばされた。


「僕は…柏木、奏一郎」


伸ばされたその手を、私はしっかりと握る。

冬の冷気にすっかり冷えてしまった、奏ちゃんの手を。


「こちらこそ……また、よろしく。小春」



私の大切な



幼なじみの手を。