桜涙 ~キミとの約束~



「相変わらず双葉を狙ってんだな、新谷」

「そう、みたい」


廊下を行き交う生徒たちの声もどこか遠い気がする中、リクの話しにどうにか笑って答えてみせたけど……

うまくできてなかったのかリクが眉を寄せる。


「……小春?」


このままリクの前にいたら、何かが壊れてしまう。

そんな気がして私は、息が詰まるほどのダメージの中、必死になって一歩、足を動かした。
そして……


「あの、ごめんリク。よっちんに話があるから行くね」


嘘をついて、教室へ逃げ込む。

振り返らずに、よっちんに駆け寄って。


「よっちん、おはよ」


自分の席じゃないけど、よっちんの隣りの席に腰を下ろした。