「奏ちゃん……」
「ここ、陸斗の教室だろう?」
奏ちゃんの顔は、微笑んでる。
でも、言葉には微かに刺があった。
しばらく見ていなかった、私を想いの檻に閉じ込めようとする、孤独に怯えた奏ちゃんだ。
「う、うん。少し、リクと話をしてたの」
「そうか」
少しも笑みを崩さない奏ちゃんに少しだけ恐怖を感じる。
薄暗い教室。
雰囲気のせいで奏ちゃんが怖く見えるのかもしれない。
そう思った私は声をかける。
「戻らないとね。奏ちゃんも一緒に行く?」
このままここで話をしていたら、よくない気がして私は奏ちゃんの前に立つと声をかけた。
──瞬間、私の体が強い力で移動し、背中に冷たく固いものが当たる。
目の前には、奏ちゃん。
私の肩を押さえつけ、メガネの奥の瞳に暗い怒りを宿してた。



