桜涙 ~キミとの約束~



「そうだよな。オレ、ちょっと思い出したかも」

「……何を?」

「初めてお前と会った日にもらった強さ」


私と……会った日?

転校初日に何かあっただろうか?

思い当たることもなく首を傾げると、リクはちょっと寂しそうに笑って。


「オレなりに頑張ってみるよ」


告げて、私の頭をくしゃりと撫でると「またな」と残して教室を出た。

1人、教室に残された私はリクから聞けた前向きな言葉に頬を緩める。

無理はしないでほしい。

けれど、少しでもリクの心が前に進めたならとても嬉しい。

灯篭に込めた願いが、リクの力になりますように。

もう小さくなった光を見ながらもう一度願った直後──

背後から、カラリと教室の扉が動いた音がして。

私はリクが戻ってきたのかと思い振り向いた。

けれど……


そこに立っていたのはリクではなく。


「……こんなところで、どうしたんだい、小春」


微笑みをたたえた奏ちゃんだった。