フワフワと空に上がっていくたくさんの灯篭。
夜空に浮かぶ淡いオレンジは幻想的で、その美しさに私の心は感動で切なく震えていた。
願いが、想いが、夜空へと旅立っていく。
「……綺麗だね」
私の言葉に、隣りに立ち同じように灯篭を眺めているはずのリクからは返事がなく、気になって彼に視線を移せば。
──トクン。
鼓動が、音をたてた。
リクの瞳は、灯篭ではなく……
私を、映していたから。
二人しかいない、仄暗い教室。
窓の外にはふわりふわりと夜空を目指す美しい光の群れ。
私を見つめるリクの表情は真剣でいて、どこか悲しげで……
整った顔立ちに浮んでいる甘やかで儚いような雰囲気に、私は囚われたように身動きもできずにいた。
ただ、心臓だけは色めき立つようにテンポを早めていて。
……ふいに、リクの右手が私へと伸ばされる。
その指が、頬に触れる直前──
リクは、眉間を切なく歪めて。
「……ごめん」
謝罪の言葉を口にすると、手を引っ込めた。
まるで、何かに怯えるように。



