「なんでマッチなんて持ってるの?」
「そりゃ、いつ遭難してもいいように」
「普通に暮らしてたら遭難なんてしないでしょ」
「そうなんだー」
「…………」
リクのギャグに私は無言で彼を見つめてあげる。
すると、リクはわざとらしい咳払いをして。
「他クラスの出し物で手作りグッズの店があって、そこで見つけたんだ。気に入って買った」
マッチ箱を振って、シャカシャカと音を鳴らした。
もう、最初からそう言えばいいのに。
でもまあ、面白く言うリクも実は嫌いじゃないんだけど。
そんなやり取りの間に校庭では点火が始まったらしく、次々と小さな灯りが増えていく。
「貸して。点けてあげる」
素直にリクに灯篭を渡すと、彼はマッチをすって灯篭に火を灯した。



