桜涙 ~キミとの約束~



……きっと、リクはまた自分の幸せに背を向けている。

資格はないと、願い事はできない、と。

……それなら。

私は、止まっていた足を動かして歩みを進めると、リクの横に並んで彼と同じように校庭を眺めた。


「……なにしてんの? 灯篭飛ばし、するんだろ?」

「うん。するよ」

「だったら──」

「ここから飛ばすの」


リクに微笑みかけてから、私は目の前の窓を開けた。

そして──


「……あ」


私は灯篭を見て、動きを止めてしまう。


「火が……」

「ないな」


クスッと笑ったリクは、ポケットから小さな箱を取り出し、私に差し出した。


「ほら、これ」


それは、可愛らしい雰囲気のマッチ箱。

桜の花びらの中で祈りを捧げる小さな女の子のイラストがあった。