リクは窓際に立ち、静かに校庭を眺めている。
どこか寂しそうな背中。
それはまるで、リクがお母さんの事について話してくれた日に見たような後ろ姿に思えて。
「……リク」
私は、そっと声をかけた。
少しだけ肩を震わせたリクが、こちらを振り返る。
そして、私の姿を瞳に写すと少しだけ笑んだ。
「お前ってさ、昔からオレを見つけるのが得意だよな。かくれんぼとか最強だったし」
「そう?」
「うん、そう」
笑みを含んだ声で頷くと、リクはまた窓の外を眺めた。
私は教室の入口に立ったまま話し掛ける。
「灯篭飛ばし、始まっちゃうよ?」
「うん。オレはここから見てるから」
「お願い事はしないの?」
私の問いかけに、リクはふと瞳の色を翳らせた。
けれどすぐにニッコリと微笑んで。
「いっぱいありすぎて決められないから今回は不参加」
茶化すような明るい声で言う。
隠したリクの本音に、心が苦しくなった。



