文化祭、最終日。

多くのお客さんで賑わっていた一般公開の時間も無事に過ぎ、楽しい余韻に浸りながら校内の片付けを終えた私たち生徒は、しめくくりとなる後夜祭に参加していた。

十九時現在、校庭にはたくさんの生徒が集まっている。

みんなが手にしているのは、小さな灯篭。

これは後夜祭名物の「灯篭飛ばし」をこれから行う為だ。

私は奏ちゃんから「幻想的で感動するよ」と聞いていたので、この時を楽しみにしていた。

濃紺の空にはいくつもの星が元気に輝いていて、灯篭が空を舞い、夜空を彩るのを心待ちにしているようにも見える。

私は、自分の手にしている灯篭に目を移した。

灯篭は薄い紙と竹でできていて、火を灯して熱気球のように飛ばすのだ。


「小春は何を願うの?」


隣りに立ち、私と同様に灯篭を手にしたよっちんが聞いてきた。

それは、灯篭を飛ばす時に願いを込めると叶うというジンクスがあるからだ。