トンカン、トンカン。
そんな音があちこちから聞こえてくる校内。
文化祭まであと二日と迫った今日は、全学年、午後から文化祭準備の時間に当てられていてとても賑やかだ。
「美乃ちゃーん!」
教室内に新谷の軽やかな声が響く。
床に座って私と一緒に装飾作りの作業していたよっちんは、ちょっと迷惑そうに眉間にシワを作って顔を上げた。
私もつられて顔を上げると、そこには見慣れない姿の新谷が。
「どう? 似合う?」
彼が纏う衣装は、クラスの出し物であるメイド&執事喫茶の執事さんの衣装だ。
燕尾服タイプの黒いジャケットと同カラーのズボン。
中にはグレーのベストと白いシャツ。
首元を飾るネクタイも黒だけど、ワンポイントについているゴールドのブローチがオシャレだ。
手には手袋をしている。
新谷は背筋を正し、よっちんに向かって右手を差し出した。