「そうだね。小春の言う通りだと私も思う。だから彼は、もう手遅れだと気づいてる」

「え?」

「それでも大切だから、意地を通そうとしてるんだよ」

「あの……よっちん、難しくてよくわからないんだけど……」


眉間にシワを寄せて悩む私を見てフフッと笑ったよっちん。

彼女の髪が、夏の生温い風に揺れる。


「大切であればあるほど簡単には譲れないものでしょう? 彼が小春を大切に想い、小春が彼を大切に思うから、ぶつかる」

「えぇっと……つまり、リクも私も互いに大切に想うからこそ、互いの願いがぶつかってしまう、という事?」


確認すると、よっちんは小さく頷いた。


「小春は、彼を救いたい?」

「救う……というか、放っておけないというか……」

「だったら、放っておかずにいればいいと思うよ」

「でも、リクはきっとそれを望んでない」


だからこそ、距離を置いているんだと思うから。

そう告げると、よっちんは照りつける太陽に手をかざして、まぶしそうに目を細める。