「最近、柏木先輩と一緒にいないよね」
「……うん、そうだね」
答えながら、私は夏休みが終わる前の事を思い出していた。
リクの口から、リクの本当のお母さんが自ら命を絶っていたという話しを聞いた日、鉢合わせた奏ちゃんに時間をくださいと頼んでから、奏ちゃんは強引に一緒にいるようなことはしなくなっていた。
けれど、私に対する想いは隠さず、柔らかく滲ませて接してくれている。
それにより、どこか痛みを伴うようだった奏ちゃんと私の関係は少しずつ落ち着いてきていた。
ただ……
「本庄君も、小春のとこに来ないね」
「そう、だね……」
そう。夏祭りで近づいたように感じていたリクは、再び私から距離を置いているようだった。
原因は、奏ちゃんとの鉢合わせによるものなのか。
それとも……不幸にしてしまうという恐れからなのか。
後者ならば、私は不幸だと感じた事なんて一度もないのに。
でも、リクが時折何かを隠すように切なく笑うのは、過去のトラウマが原因なのはハッキリとわかった。
わかったけれど……
「どうしたら、伝わるのかな?」
リクのせいではないと。
自分を責めなくてもいいのだと、どうしたら……



