桜涙 ~キミとの約束~



私は急いでカバンから携帯を取り出すと、ディスプレイには確かに着信があったことを告げるマークが表示されていた。


「あ……ご、ごめんね。気づかなくて……」

「どこかで倒れたんじゃないかって、心配したんだ」

「ごめんなさい……」


心配かけた事が申し訳なくて、私は謝罪する。

でも、本当はそれよりも……

奏ちゃんが向けているだろう、怒りの理由が怖かった。

きっと、私がリクと一緒にいた事を良く思っていないはず。

だからこそ、心配だけでなく、瞳に怒りを滲ませているのだろうから。

どうしたらいいかわからずに俯いてしまう。

そうして、私たちの間に少しの沈黙が降りて……

近所の犬がひと吠えしたのを聞いた直後。


「なあ、奏チャン」


三人を支配していた静寂を、リクの寂しそうな声が破った。