リクの瞳が、私を通り越して何かを見つめ険しさを纏う。
何事かと振り返ってみれば……
そこには。
「そ、うちゃん……」
メガネの奥にある瞳に怒りとも悲しみともとれる複雑な色を浮かべた、奏ちゃんが立っていた。
奏ちゃんの真っ直ぐな視線に私が固まっていると、背後からリクの明るい声がする。
「あれっ? お手伝いは?」
「終わったよ」
リクの声に対して、奏ちゃんの声色はどこか冷たい。
奏ちゃんがリクにお説教する時にも、その声色が普段のものとは変わって厳しくなる事は多々あったけど……
こんな風に、冷めたような声をリクにかけるのは初めてだと思う。
でも、声をかけられたリクは表情を変えることはなく、少しだけ笑んで「そっか、お疲れさま」と口にした。
すると、リクに向けられていた奏ちゃんの視線が、再び私に注がれる。
「電話、したんだよ」
言われて、奏ちゃんが交わした小さな約束を思い出した。
あとで電話すると言われていた事を。



