桜涙 ~キミとの約束~



奏ちゃんはどんなに気持ちでこの家で過ごしていたんだろう……

切なくなりながらも奏ちゃんの部屋の前に辿りついた私の耳に、聞こえてきたのはリクの声。


「悪い嘘じゃないんだしいいじゃん」


何の話だろう?

そう思ってドアノブに手をかけようとしたら、今度は奏ちゃんの声が聞こえてきた。


「悪いかどうかは小春が判断することだろう」


出てきた私の名前に、思わず手を引っ込めてしまう。


「まあね。でも……ホントピュアだよなぁ」


は、入っても大丈夫……だよね?

さっきの話の続きだろうし……と思った刹那──


「オレの母親とは真逆だ」


リクの言葉に、私は再び出しかけた手を止めた。


「どっちの?」

「アッチしかいないじゃん」

「……僕は会ったことないからコメント出来ないよ」

「そりゃそっか」


……どっちって?

会った事がないって、何?