桜涙 ~キミとの約束~



そして、ようやく数式との格闘が終わった私はトイレ休憩の為に立ち上がる。


「奏ちゃん、ちょっとおトイレ借りるね」

「ああ、いってらっしゃい」


奏ちゃんの声を受けると私は、集中しているリクの邪魔にならないようにそっと扉を閉めて廊下に出た。
そして、トイレから出て部屋に戻ろうとした時。


「こんにちは、小春ちゃん」


ちょうど外から帰宅したらしい奏ちゃんのお母さんと会った。


「こんにちは。おじゃましてます」


綺麗な笑みを浮かべた奏ちゃんのお母さんは、涼しげな水色のワンピースを着ている。

上品なデザインで、奏ちゃんのお母さんにとってもお似合いだ。


「その服素敵ですね!」

「ありがとう。気に入って買ったばかりなの。今日は陸斗君も一緒なの?」

「はい。私と一緒に奏ちゃんに宿題で迷惑かけてます」

「そう。そうだ、うちの新作ゼリーは食べた?」

「いえ、今日買って行くつもりなんです」


そうだった。

宿題に追われててすっかり抜けてたけど、今日は噂の新作を買って行くと心に決めてたのだ。