「ねーねー、奏ちゃん。私の人生に数式は必要ないと思うの」

「必要かどうかは、次の式を解いてから考えよう小春」

「うう……奏ちゃんのいじめっこ……」


いつもは優しく教えてくれる奏ちゃんも、毎年この時ばかりは少しだけ厳しくなる。

私は泣き言を零しながら突っ伏した体を起こして溜め息を吐いた。

すると、私の向かい側に座っているリクが呆れたように肩をすくめて。


「小春~。奏チャンがせっかく貴重な時間をさいて助けてくれてんだからマジメにやりたまえよー」


私を注意した。

けれど、すぐさま奏ちゃんがメガネを光らせ厳しい視線を陸斗に向ける。


「お前もだよ、陸斗」

「アレッ、バレてた?」


奏ちゃんのツッコミもなんのその。

リクは懲りてる様子もなく、頬杖をついてプリントにいたずら書きをしている。

それを見た奏ちゃんが深い溜め息を吐き出した。