桜涙 ~キミとの約束~



「もう、大切な人をなくしたくないから、強くなりたかったんだ」

「リク……」

「でも、実際は困らせてばっかで、逆に庇われちゃうし、なんかいっつもオレの方が小春に支えてもらってる気がする。出会った時からずっとさ」


思い馳せるように、リクの瞳が優しく細められる。

けど……その瞳が悲しく曇ったかと思えば。


「けど、いい加減に小春離れしないとダメだよな」


また、悲しい言葉を紡がれてしまった。


「そんな……別にこれからも──」

「今まで通りにはいかないんだ。オレも奏チャンもそう思ってる」


言われて、私は押し黙る。


「前にも言ったろ? オレたちは幼なじみだけど……」

「わかってるよ。私だって、わかってる」


幼なじみだけど、私たちは異性だから。

子供のように、いつまでも一緒じゃいられない。


「それなら、お前はオレのとこにいちゃ、ダメだろ」


諭すように言われて、私は首を横に振った。


「違う。私は、奏ちゃんとは付き合ってないし──」

「でも、奏チャンはそう思ってない。小春を必要としてるんだ」


視線を足元に落としたリクの声は、静かだけど……重かった。