桜涙 ~キミとの約束~



澄み渡る青い空。

白い入道雲の下に広がる少しだけ背の高い草。

気持ちのいい風が通り抜けて、見上げた空からは眩しい太陽の光。

その光に一瞬、視界が奪われる。

そして……

風を受け気持ちよそさうにそよぐ緑の中に建つ、どこか懐かしさを纏った秘密基地の屋根の上に……


空を見つめる


リクがいた。


リクは、屋根の上にかかる木陰の下に寝転び、チューチューアイスを口に咥えている。

その瞳はぼんやりと空だけを映しているように見えるけど……心は、亡くなったお母さんへ向かっているのかもしれない。

私はリクの名前を呼ばず、ゆっくりと秘密基地である小屋に歩み寄った。

すると、私の気配に気付いたのか、リクがこちらへと顔を向けて。

瞬間、無気力だったリクの瞳が、生気を取り戻すかのごとく丸くなった。


「……小春っ? え、なんでここにいんの?」


寝転んでいた体を起こして、瞬きを繰り返すリク。

とりあえず、驚かす事には成功したらしい。