リクのお母さんが亡くなったのは私たちが中学に上がる頃だ。
料理が上手で優しい笑顔が素敵だったリクのお母さん。
私も可愛がってもらった記憶がたくさんある。
そんなリクのお母さんがガンを患って亡くなってしまった翌日、リクが突然いなくなった。
大人たちはみんな焦って探してて、私と奏ちゃんにどこに行ったか知らないかと聞いてきた。
その時は知らないと答えたけど……
本当は、私たちは知ってた。
秘密基地の中、小さな窓際に座り、泣くことを我慢するように空を見上げ続けているリクの事を。
結局、ご飯も食べないリクが心配で、私はリクのお父さんにこっそりと告げ口してしまったのだ。
以来、リクは毎年お母さんの命日の頃には秘密基地に訪れているようだった。
私と奏ちゃんは邪魔するのも悪いからと、あえて行かないようにしていたんだけど……
今日、もしリクが秘密基地にいるのだったら、せめて謝ることだけはして帰ろう。
……考えて見れば、リクも奏ちゃんもお母さんを失ってる。
当たり前のようだけど、今日もお母さんが健在である私は、とても幸せなのかもしれない。
そんな事を思いながら久しぶりの原っぱへと足を踏み入れると、数年前と変わらない自然の香りが私を迎え入れてくれた。



