桜涙 ~キミとの約束~



「ああっ! 大変だ奏チャン。あんなところに全裸の生徒がっ!」


リクが物凄い勢いで校舎の方角を指差した。


「なんだって!?」


慌てて視線を動かし全裸の生徒を探す奏ちゃん。


「……って、どこにもいないじゃないか」


言いながら、見逃すまいとまだ校舎に目を配っている奏ちゃんに、私は声をかけた。

「残念な事ですが、奏ちゃん」

「ん? どうしたんだい、小春?」


振り向いた奏ちゃんに、私は彼が見ていなかったリクの行動を報告する。

「今のすきに、リクが逃げました」


…………

奏ちゃんと私の間に沈黙が落ちて。


「また逃げられたか……」


がっくりと、奏ちゃんは肩を落とした。